結婚式を控えたアイちゃんとサムくんが結婚式の準備をする中で出てくる「音楽の著作権」の疑問を、弁理士の城田先生がわかりやすく解説します。

No.013クラシック曲は著作権が切れているから自由に使っていいって本当?

2019年04月23日
結婚式の音楽著作権 クラシック曲は著作権が切れているから自由に使っていいって本当?
  • クラシック曲だからといって著作権が切れている=自由に使って良いとは限りません!

  • そうなんですね・・
    詳しくおしえてください!
  • わかりました。まずは「著作権」についてお話ししますね。
  • おねがいします!
  • 音楽の著作権は、著作者が楽曲を創作した時に発生し、著作者の死後70年※1を経過するまで存続すると著作権法で定められています。
  • 著作権が発生してからではなく、死後70年なんですね。
  • はい。著作権が存続している期間のことを「著作権保護期間」とか「著作権存続期間」と言いますが、ここでは便宜上「保護期間」と呼びますね。
  • はい!
  • よく「著作権が無いから自由に使って良い」とか「著作権が切れてないから勝手に使えない」なんていうときの「著作権の有無」は、この保護期間のことを言っているのです。
  • そうだったんですね!
    保護期間が切れた音楽はどうなるんですか?
  • 保護期間を過ぎると著作権は消滅し、「パブリックドメイン(public domain)」(略してP.D.ともいいます)として、著作者の利用許可がなくとも使える著作物となります。
  • パブリックドメインは以前もおしえていただきましたね!
  • そうでしたね。
    さて、アイちゃんとサムくんは、エンディングムービーに「クラシック曲」を使おうと相談していましたが、ここで注意しなければいけないのは、その曲が保護期間中かどうか、ということです。
  • はい。
  • モーツァルトやベートーベンなど昔の作曲家が創ったクラシック曲の保護期間はすでに切れていますが、近現代に作曲され、保護期間中のクラシック曲もたくさんあります。
  • クラシック曲でも、必ずしも著作権が無いとは言い切れないんですね。
  • はい。そのため、楽曲のスタイルがクラシックであっても、使おうとしている今現在において、その曲が著作権の保護期間中かどうか、念のため調べてみるのが良いでしょうね。
  • わかりました!
    ちなみに、どうやって調べればいいですか?
  • 簡単な調査でしたら、JASRACなど著作権管理団体のデータベースは役に立ちますよ!
    ただし、管理団体のデータベースを見て「PD」のマークがあったとしても、それだけで使用料がかからないと決めつけてはいけません!
  • どうしてですか?
  • PDの楽曲は自由に利用できますので、編曲されたり、歌詞がつけられたりして、PDを使って制作された新しい楽曲として、使用料がかかるケースもあります。
  • なるほど・・注意して確認してみます!
  • さて、ムービーに音楽を入れる上で、もう一つ忘れてはならないことがあります。
    エンディングムービーに入れる音源を市販CDから使用する場合は、「著作隣接権」についても考えなくてはいけません。
  • そうでしたね。
  • PDとして自由に利用できるクラシック曲であったとしても、CDには著作隣接権(演奏したアーティストや録音したレコード会社の権利)がある場合があります。
  • はい。
  • そのため、モーツァルトやベートーベンなどが作曲した、著作権の保護期間が切れている楽曲であっても、演奏している人やレコード会社ごとに、著作隣接権について利用許可の確認が必要になります。
  • クラシック曲の市販CDをムービーに入れる時は、著作隣接権も忘れずに確認します!
  • なお、著作隣接権にも保護期間※2がありますので、とても古い演奏を録音したものであれば保護期間が切れていることもあります。
  • そうなんですね!
    著作隣接権の保護期間はどうやって確認したらいいですか?
  • CDに封入されている冊子等で、その音源の演奏日もしくは録音日を確認してみましょう。とても古い音源だったり、録音日などが分からない場合は、各レコード会社へ問い合わせてみると良いでしょう。
    ちなみに、生演奏の場合は著作隣接権の確認は必要ありませんよ。
  • わかりました!
  • ということで、クラシック曲を利用するときであっても、著作権の使用料がかかったり、利用手続きをしなくてはならないケースもあるため、利用前に一度確認してみるのが望ましいでしょう。市販CDの音源を使う際は、著作隣接権も忘れないでくださいね。
  • はい!先生ありがとうございました!

今回のまとめ

クラシック曲は必ずしも、著作権がなく自由に使っていい音楽というわけではありません。また、著作権が切れている楽曲でも、市販CDの音源をムービーに入れる場合は、著作隣接権についても忘れずに確認しましょう。

※1 保護期間は、2018年12月30日に70年に改正されたばかりのため、50年であった頃との混在が起きやすい時期です。また、太平洋戦争中の楽曲は「戦時加算」と呼ばれる制度により、保護期間が少し長い場合もあります。著作者や著作物の種類毎に異なるため、使用の都度確認が必要です。(2019年4月24日現在)

※2 原則として、演奏が行われてから、或いは音源がリリースされてから70年を経過するまで存続します。